なぜ地方のフォトグラファーが、東北のデザイナーたちの活動『東北デ、』に惹かれるんだろう?

 

01|「東北デ、」を見ていたら、「仕事」がわからなくなってきた

なぜ、東北のデザイナーたちの活動「東北デ、」に、こんなに惹かれるんだろう。

2025年、岩手在住のデザイナー・鈴木健一さんが「東北デ、」の取材を受けたとき、記録撮影で同行した。

それをきっかけに、東北各地で活動する13人のデザイナーたちの仕事を追いかけるようになった。

デザインそのものに強い関心があったからではない。

むしろ、彼らの仕事を見ているうちに、自分が「仕事」だと思っていたものが、少しわからなくなってきた。

東北では、人口が減り、働き手も需要も減って、それまであった仕事の市場が小さくなっている。

地域に存在していた仕事の総量を、そのまま維持することが難しくなっている。

すでに市場として存在している仕事を奪い合うだけでは、限界がある。


だから、まだ市場として認識されていないところから、仕事そのものが生まれるような動きが必要になっているのではないか。

そうなると、「どうやって仕事を探すか」だけでは足りない。

まだ市場になっていないもののなかに、仕事の種があるのかもしれない。

そもそも、仕事はどうやって生まれるのか。

そんなことを考えるようになった。

 

02|仕事は、最初から「仕事」なのだろうか

「東北デ、」を見ていて、ひとつ面白いと思ったことがある。

そこに登場する「デザイナー」たちは、どうもデザインだけをしているわけではない。

グラフィックをつくるだけでなく、地域を歩いて話を聞いたり、人と人をつないだり、場をつくったり、企画を立ち上げたり、誰かと一緒に何かを始めたりしている。

パラパラを踊り、神輿を担ぎ、伝統芸能を舞い、トラクターを運転し、スナックに立ち、棺桶に入り、反復横跳びをしている。

「デザイナーなのに、デザインだけをしていない。」

最初はそんなふうに見えた。

でも、考えてみると、それはデザイナーに限ったことではない。

編集者、建築家、研究者、教育者など、それぞれに専門性を持った人たちも、実際にはその専門性だけで仕事をしているわけではない。

地域にあるものを見つける。
人と人をつなぐ。
組み合わせる。
編集する。
一緒に何かをやってみる。

そうやって人や場所との関係をつくっていくなかで、活動が生まれ、その活動があとから仕事になることもある。

「この仕事には、この専門家」というように、最初から仕事と人が決まっているわけではない。

仕事をつくろうとする前に、活動や関係が先にあって、そこから仕事が生まれることもあるのではないか。

 

03|いったん職能を外してみる

「東北デ、」を見ているうちに、自分がフォトグラファーという職業をどう捉えていたのかが揺さぶられた。

これまでの自分なら、「それは写真の仕事になるだろうか」と考えていた。

でも、「この人、この場所、この状況に対して、自分は何ができるだろう」

と考えてみたらどうだろう。

写真を撮るかもしれない。

撮らないかもしれない。

人を紹介するかもしれない。

場をつくるかもしれない。

なにか企画するかもしれない。

ただ、一緒に手を動かすだけかもしれない。

その結果として、あとから写真の仕事が生まれることもあるかもしれないし、ないかもしれない。

だから今は、フォトグラファーとして仕事をすることだけを考えず、自分の職能をいったん脇に置いて、一人の人間として、人と一緒に何かをやってみることを試している。

自給用の野菜をつくる畑講座に参加してみたり、

歴史の勉強会を企画してみたり、

映画上映会の実行委員をしてみたり、

直接、仕事にはつながらないけれど、気になっていたことを実際にかたちにしてみている。

自分には何ができるのか。

相手には何ができるのか。

一緒になると、何ができるようになるのか。

そうやって動いているうちに、まだ名前のついていないものを見つけられないだろうか。

「東北デ、」に惹かれたのは、たぶん、自分がこれからやってみたいことを、すでに東北のあちこちで実践している人たちを見つけたからなのだと思う。

人に出会い、話し、一緒に動いてみる。

ま、なにも見つからないかもしれませんが。


「東北デ、」について詳しくはこちら。


●「東北デ、」で紹介されているデザイナー


  • 青森県:アソビス 佐々木 遊 さん(八戸市)

  • 青森県:トヨカワイラスト研究室 豊川 茅 さん(青森市)

  • 岩手県:のはら 阿部 拓也 さん(遠野市)

  • 岩手県:鈴木 健一 さん(花巻市)

  • 秋田県:澁谷デザイン事務所 澁谷 和之 さん(美郷町)

  • 秋田県:ココラボラトリー 後藤 仁 さん(秋田市)

  • 宮城県:合同会社nekiwa 横塚 明日美 さん(丸森町)

  • 宮城県:合同会社スカイスター 伊藤 典博 さん(仙台市)

  • 山形県:吉野敏充デザイン事務所 吉野 敏充 さん(新庄市)

  • 山形県:羽越のデザイン企業組合 冨樫 繁朋 さん(鶴岡市)

  • 福島県:marutt株式会社 西山 里佳 さん(南相馬市)

  • 福島県:髙木デザイン事務所 髙木 市之助 さん(いわき市)

  • 福島県:手作業 小池 晶子 さん(福島市)

 

●「続・東北デ、~東北で、デザインするということ~」|東北経済産業局HP

https://www.tohoku.meti.go.jp/kikaku/chihososei/topics/250526.html


●「続・東北、デ~東北でデザインするということ~」記録集|発行元:澁谷デザイン事務所

https://suzuransha.base.shop/items/132363758

takamune ito